セリフは文語である

よく誤解されていることですが、セリフは一見「人(役者)がしゃべる言葉」であるが故に、口語と思われています。
しかし古今東西の脚本を丹念に見ればわかることですが、セリフは口語ではありません。「〜ですわ」なんてのは、その典型で、そんな語尾でしゃべる人はほとんどいません。またセリフのように、日常で念入りに意味の込められた発言をする人なんていません。
つまりセリフとは、作者の主観記述とも違い、また日常で我々がしゃべる言葉とも異なる、第三の日本語といってよいと思います。そのことをセリフを書く時に強く意識する必要はありませんが、街中で採取した言葉こそがセリフだと勘違いすることだけはさけて欲しいところです。セリフとは「脚本」という表現形式の中だけで現れる1つの様式と思ってください。この様式を、それぞれの登場人物に応じて適度に当てはめることが必要です。
様式を無意識に用いすぎると、演劇になじみのない人には「くさい」「気色悪い」という演劇嫌いの要因にもなります。