師匠!

地下鉄の人々、第8弾。麻生駅で見かけた男性。
クロっぽい和服に足袋、雪駄を履いています。年は50才代と思われますが、背が高く、歩き方もしゃなりしゃなりと女性のような柔らかさ。
日本舞踊か何かの先生のようですが、気になるのは左耳に輝くピアス。
伝統的な世界の人がピアスなんて、ちょっとあり得ない感じ。じゃあ、この人は何の先生なのだろうと思っていると
「師匠!」

後ろから声がかかりました。駆け寄ったのは、こちらも和服の男性。30才代、足袋、雪駄、そして左耳にピアス。
「イヤ、師匠、こんなところでお会いするとは」
「正月のオハツカイ以来だね」
「イヤほんとご無沙汰しておりまして」
「まあ、そこまで一緒に歩こう」
などと話ながら、師匠が前になって二人は去っていきます。
ところが途中で何を思ったのか立ち止まり、師匠は袂から細引きを取り出しました。
それを自分のピアスにくくりつけ、一方の端を若い男性のピアスにしばります。
そして、先ほどと同じように師匠が前に立つ形で二人は去っていきました。
…いったい何の先生だったのでしょうか。