お薦めしない本

新書ブームだそうです。
十年くらい前まで新書といえば岩波新書か講談社新書くらいなものでしたが、今は「それ新書にする必要あるの?」というものまで新書ででていたりします。
しかし変わらないのは、その腰砕け度。
タイトルに惹かれて手に取り、出だしを立ち読みして「ぜひ買わねば」とレジに向かい、帰りの地下鉄の中で「あれ?」と思い、家に帰って「失敗した!」という一連の流れは変わりません。
最近それを2つもやってしまいました。

1つは「つっこみ力」。パウロ何とかさんという、自称イタリア人の匿名の誰かが著者なのですが(匿名の理由はこの本の中にある「日本人は何が書いてあるかより、誰が書いたかを重視する」からだと思いますが)、「つっこみ」そのものについてきちんとかかれているのはほんの数行で、主な内容は「メディアリテラシー」と「データに惑わされるな」の2つ。漫才のつっこみの素晴らしさ、その現実への応用などを勝手に期待したこっちが馬鹿と言えば馬鹿なのですが、編集者と著者のつけたタイトルにすっかりだまされました。比喩ではなく本当に「だまされた」という思いです。
もう1つは「狂いのすすめ」(ひろさちや)。有名な方が著者ですが、いきなりな2分論に驚かされました。「世間とは我々弱者の甘い汁を吸っているもの」だそうで、そんな単純な区分けを肯定しちゃったら、議論が進まないし、何もしない自分を肯定するだけじゃないですか。自分が苦労するのも、お金がないのも、親戚の借金に振り回されるのも「世間が悪いから」では、ただ拗ねているだけです。でもたぶん「世間」側に属するお金持ちも彼らなりに思い悩んだり日々の気がかりを憂いたりしていると思いますが。それくらいの想像力は欲しいものです。
読むだけ自分に悪影響になりそうなので、5Pでやめました。

何度も最初から買わなければいいのに、とは思うのですが、私がこんな本を買ってしまったのも「世間が悪いから」だからなのでしょう。
おすすめしません。