ふたごの空中ブランコのりは、兄も弟も、うまれてからずっと一日中ブランコに乗っているので、夕焼けを知らない。
ある蒸し暑い夕方、サーカスの団長さんが風通しをよくしようとテントにすき間をあけたので、
弟は飛びながら赤い空を見た。そして1回転して、ブランコにぶら下がっている兄の足をつかんだ。
そのつかみかたで兄は弟の驚きに気がつき、
自分も次のブランコに飛び移りながらテントのすき間を見た。
真っ赤な空がはてしなく広がっていた。
そして逆さにぶら下がっている弟の手をつかんだ。
ふたごの兄弟は何も言わなくても、手をにぎればおたがいの考えていることがわかる。
次の瞬間、彼らは次のブランコに飛び移るかと思いきや、テントのすき間から飛び出した。
テントの外では、ふたごはブランコの代わりに、空にうかぶ雲をつかんで、回転しながらつぎつぎに飛んでいった。
行き先は、あの真っ赤な夕焼けの向こう側。