gardenfull of clouds

Img444とつぜんテレビが見えなくなった。

Img439 アンテナに雲がひっかかっていたのだ。

Img443庭の朝つゆをすわせると元気になって帰っていった。

Img440それがとてもよかったらしい。翌朝起きてみると

Img442 庭いっぱいに雲が集まっていた。

ふたごのブランコのり

ふたごの空中ブランコのりは、兄も弟も、うまれてからずっと一日中ブランコに乗っているので、夕焼けを知らない。

ある蒸し暑い夕方、サーカスの団長さんが風通しをよくしようとテントにすき間をあけたので、

弟は飛びながら赤い空を見た。そして1回転して、ブランコにぶら下がっている兄の足をつかんだ。

そのつかみかたで兄は弟の驚きに気がつき、

自分も次のブランコに飛び移りながらテントのすき間を見た。

真っ赤な空がはてしなく広がっていた。

そして逆さにぶら下がっている弟の手をつかんだ。

ふたごの兄弟は何も言わなくても、手をにぎればおたがいの考えていることがわかる。

次の瞬間、彼らは次のブランコに飛び移るかと思いきや、テントのすき間から飛び出した。

テントの外では、ふたごはブランコの代わりに、空にうかぶ雲をつかんで、回転しながらつぎつぎに飛んでいった。

行き先は、あの真っ赤な夕焼けの向こう側。

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ちいさな灯台

Img128ちいさな島のすみにある

ちいさな岬のはしに

ちいさな灯台が立っている。

立ったときには、島に渡るちいさな船の目印で、だいかつやくだった。

50年たつと飛行場ができたので、わたる船もなくなってしまった。

だからいつもは灯台は消えたままになっている。でも

1年に2回だけ、灯台はあかりをともす。

それははるか沖の空をちいさなわたり鳥がとんでいく夜。

さいごのプラネタリウム

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まちにすむ人がいなくなったので、

ビルや工場や家のあかりがへった。

だから、プラネタリウムが映すよりも、ほんものの夜空の方が、たくさんの星が見られるようになった。

だからだれも見にこない。

プラネタリウムは壊されることになった。

そして最後の夜。

観客が一人もいない中で、プラネタリウムは満天の星を映し出した。

そして宇宙の果てにある、だれも知らないひみつの星を

壁に映し出してすぐ消した。

ものがたり 「め」

芽が出た。芽が出たのは座席の上だ。何の座席かというと、地下鉄の座席の上だった。始発の時間をまつ、うすぐらい車内。その長い長い座席の真ん中に、小さな小さな芽が出た。小さな小さな葉っぱが2まい、ついていた。

 発車したときには、地下鉄の中にはほとんど人がいなかった。でも時間がたつにつれて人が多くなり、座席に座る人も増えた。地下鉄の中はどんどん人が増えた。座る場所がなくなって、立つ人も増えた。ラッシュアワーになって、地下鉄の中は満員になった。
「おや、ここがあいているじゃないか」。
男の人が言った。
「だめですよ、小さな芽が出ているじゃないですか」。
女の人が言った。
「なんだこんなもの」。
男の人は芽を抜こうとした。
「なにをするんですか、やめなさい」
と女の人が男の人の腕をつかんだ。
「ええい、抜かないでも座ってしまえばいいんだ」。
男の人は芽の上に自分のおしりをのせようとした。
「いけません!」
女の人は男の人をつきとばした。
「なにをするんだ!」
「あなたがいけないんです!」
ふたりはけんかになった。まわりの人たちが止めに入った。「どうしたんですか」。
「だってここに小さな芽が」。
「こんなものどうでもいいじゃないか」。
「かわいそうじゃないですか」。
まわりの人たちもふたつに分かれて言い合いになった。
「地下鉄は人でいっぱいなんだ。草の芽なんか抜いてしまえ」。
「こんな小さな芽を抜くなんてかわいそうだ」。
「仕事の前にゆっくり座らせろ」。
「先に座っていたのは草の芽ですよ」。
地下鉄全部で言い合いになった。地下鉄が駅にとまるたびに新しい人が入ってきて、そのたびに芽の場所に座ろうとする人と、それを止めようとする人とのあいだでけんかになった。でも人々は自分の仕事に行かなければいけなかったので、自分の駅に着くと降りていった。地下鉄の中は少しずつ人が減っていった。立っている人も減り、席も空き始め、最後の駅に着く頃には誰もいなくなった。地下鉄の中は小さな芽だけになった。でもこのころには、小さな芽はほんの少しだけ大きくなっていた。そして3枚目の葉っぱが出てきていた。

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