上演場所によって脚本の構成は変わる

現在書いている脚本が、主催者側の都合で上演場所が「小学校の体育館」→「教室」→「小劇場」と二転三転したことは以前書きましたが、これによって脚本は大きく変わります。
特に体育館、教室、というのはそれ以外のものに見せるのは本当に難しいからです。例えば教室は建物である校舎に入ってくることからすでに客はそこが「学校の教室」であることを強く意識し、教室以外の何者でもない特徴(広さ、天井の低さ、窓の位置、黒板など)の部屋に入ってきます。
当然、脚本は「教室」で展開される物語が求められます。いや、もちろん舞台美術や装置を徹底的に作り込めば、教室以外の場所に見せることはできますが、それでは教室で上演する意味がなくなってしまいます。また中途半端な美術では客に「ここは教室に見えるけど、物語上は違うんです」というお約束を強いるしかありません。リアリティも何もなくなります。
となると、物語が始まってから終わるまでそこを「教室」として進行させなければいけません。仮に夢のシーンやら回想シーンは、ほんのわずか可能かもしれませんが、全3幕あったとして、第2幕全部を教室以外の場所に設定することはできません。
つまり脚本の構成として、「場」は変えられないということです。おのずと物語の展開は単調になるおそれがあり、構成時点でそれを打ち破る大きな波をつくるか、あるいはそれを生かして淡々とした日常を見せるか、割り切りが必要です。

ところがこれが劇場で上演となると、話は変わります。
小劇場はそれぞれ個性があるとはいえ、やはり劇場であることには変わりありません。幕ごとはもちろん、シーンごとに「場」を変えてもよいのです。前シーンは室内だったのが、次のシーンでは海辺など、思い切った場の変更も可能なので、物語の構成も自由です。
とはいえこまめに変えると舞台美術の転換も大変なので、全3幕なら、1と3は同じ場所、2はそれらとがらりと違う場所にすることをおすすめします。さらに可能なら、1と3は家の中などやや閉鎖的な場所、2は広い屋外など開放的な場所に設定すると、見る方の気分も大きく変わって退屈も緩和されてよいと思います。