ランの育て方

本州では難しいといわれるランですが、北海道ではとても簡単な植物です。
特に新しい住宅では一日を通して全室暖かいので、コチョウランやカトレアなどの高級なランにはうってつけの環境。また肥料を必ずしも必要とせず、水やりも忘れても何とかなり、病害虫の被害もほとんどありません。これ以上簡単な植物などないと言っていいくらいです。

1あなたの家に向いているのは?

A.冬でも家全体が暖かい。朝でも18〜20℃くらいはあるという、ちょっとリッチなおうちにお住まいの方。
コチョウラン、カトレア、バンダなど熱帯のランがおすすめ。
コチョウランは高くて気難しいと思っている人が多いですが、実はかなり手間いらず。そして律儀なので、毎年花が咲きます。

特に北海道に多い「真冬にTシャツでアイスを食べる」おうちにはぜひこうしたランがおすすめ。ランにかぎらず、熱帯物は絶対グッド。

B.すき間があって、冬は寒い。暖房を消して朝起きると10℃以下になっているという、比較的お金持ち風ではないおうちに住んでいる方。
シンビジウム、デンドロビウムなど暖かい温帯、亜熱帯のランがおすすめ。何しろある程度低温に当たることも大事な人達なので、むしろ暖かいうちでは育てにくい。シクラメンがよく咲くようなお家も同じです。
いわゆる洋ランではないですが、フウランやナゴランもけっこうおすすめ。香りも素晴らしい。

2どんなランでも共通する手入れ2ヶ条

・5〜9月頃は成長期。水をよく与え、肥料も与える
・10〜4月頃は休眠期で開花期。水は控えめにし、肥料は与えない

3 5月から9月の手入れ

暖かい時期は成長期。成長に必要なのはこの4つ。
・光合成をするための日光
・水
・風通し
・肥料もあればいうことなし
では1つずつ説明します。

光合成をするための日光
洋ランは遮光した方がよいといわれますが、ランの大家である故・江尻光一先生がおっしゃるには、コチョウランだって光に慣れれば真夏の直射日光でも大丈夫だそうです。熱帯自生地でも日なたで育っているのを見て、そのようにされているそうです。
一番悪いのはあっちこっち移動すること。これはランに限ったことではなく、どの植物もそうです。たとえば、ビルの地下で経営していた床屋さん。ポトスが元気に何メートルも育っていたのに、外に出したとたん枯れたそうです。
環境になれるのが植物のいいところ。かといって普通の食部では、日陰はやめたほうがいいでしょう。ランもしかり。


成長期には水がたくさん必要です。水ゴケで育てている場合は、水ゴケを触ってみて、乾いていたら与えます。量はたっぷりと。
生長期って要するに、自生地での雨季なんですね。
だからもともと熱帯や亜熱帯に自生している人たちには、毎日スコールがあるのは当たり前。
とはいえ毎日水やりをするのは大変なので、あまりかわかないうちにたっぷり与えるのです。でも、たたきつけるスコールのように激しくは与えない方がよいかと思います。

風通し
風がないと成長しないわけではないのですが、コチョウランもカトレアもデンドロビウムも、本来、地面に根を張るわけではありません。根を木や石に巻き付けて(着生といいます)すみかにしています。つまり常に風にさらされているというわけです。
ですから育てる場合も、鉢を戸外に出してあげるとランが喜びます。北国の場合は5月下旬頃から9月上旬頃まで外で育てるとよいでしょう。

肥料もあればいうことなし
先ほど書いたように、ランの多くは木や石の上で生活しています。つまり養分がほとんどない場所。それに慣れているので、私たちが育てる場合もやたらに肥料 を与える必要はありません。実際、与えなくても花は咲きます。その花をより多く楽しみたい場合は、与えた方がよいでしょう。
うすめた液肥を2週間に1回、水やりをかねて与えてもよいですし、固形肥料を置いてあげてもよいでしょう。ただしくれぐれも、与えすぎには注意。根腐れの原因になるからです。迷ったら与えないくらいでちょうどよいでしょう。

4 10〜4月の手入れ

寒いのでランは休眠期になります。その場合のポイントは以下の4つ。
・室内に入れる
・水は控えめ
・肥料はいらない
・つぼみがあがってきたら動かさない
ではまた1つずつ説明します。

室内に入れる
これは寒くなるので、当たり前といえば当たり前ですが、カトレアは9月中旬まで、デンドロビウムは10月、シンビジウムは遅くても11月はじめまでには室 内に入れます。シンビジウムはある程度寒さに当たらないと開花しないとも言われているので、逆に早く9月頃取り込まない方がよいかもしれません。

水は控えめ
成長しないということは現状をキープするだけの水分があればよいということですから、そんなに水を必要としなくなります。また自生地では乾季になります。
水ゴケを触ってみて、乾いてるなと思ってから数日後でよいでしょう。ただし水ゴケは乾くと水をはじいてしまうので、その場合は洗面器やバケツなどに水を張ってつけておきます。
ただ、ランの中には水が大好きなものもいます。パフィオメディラムやフラグミペディウム、マスデバリアなどです。これらは一般の鉢花と同様、水ゴケが乾いたら水をたっぷりと与えましょう。

肥料はいらない
ランの休眠期には肥料は必要ありません。与えても吸収しないからです。むしろ根腐れの心配があるので、与えないようにします。休眠期は花の咲く時期です が、そのための肥料や、あるいは花後のお礼肥も必要ありません。公務員のように、不要な謝礼は受け付けないというわけです。

つぼみがあがってきたら動かさない
ランに限らず、植物は環境の変化を嫌がります。とくにつぼみの時期はデリケートなので、この時期に部屋を移動するなど環境を変えると、つぼみが落ちてしまう可能性があります。気をつけましょう。

5 植え替えと株分け

鉢植えの植物はどれもそうですが、植えっぱなしにしていると土や水ゴケが劣化してしまいます。少なくとも2年に1回は植え替えをします。新しい素焼き鉢と、よくぬらした新しい水ゴケで植え付けましょう。
株をそのまま大きくしたいときには、一回り大きな素焼き鉢を買って植え付けます。小さく分割したいときには、株分けを行います。
その後は水を2週間ほど与えません。どんなに水ゴケが乾いても、与えません。というのも、植物は土が乾くといっしょうけんめい根を伸ばそうとします。充分 伸びた頃にたっぷり与えると、すばらしい勢いで吸収してりっぱな株になります。逆に頻繁に水を与えていると、「何もしなくても水があるからこのままでいよ う」ということになって、根を伸ばさないし、常に水をほしがるようになるのです。特にランや多肉植物の場合は株の中に栄養分があるので、長く水を与えなく ても枯れることはありません。また株分けや植え替えの作業は根を傷めるので、肥料も2週間以上は与えません。