スタートは早く見せろ

 「何をしたいのか」がかわからない物語は観客の興味を引きつけられません。その意味では、全ての軸は早くその姿を観客の前に現す必要があります。とりわけ看板軸は冒頭から姿を現し、「何が問題で、何を解決すべきなのか」が提示される必要があります。これが出てこないと、ほかの軸が看板軸と誤解されるおそれがあります。また看板軸は、できるだけわかりやすく、誰もが興味を持ちやすいものであることも大切。例えば「親子の葛藤」が最初に来てしまうと、今それに興味のある人しかついて行けません。「犯人を突き止める」「銀河帝国を民主的にする」「待ち人を待つ」などわかりやすく提示するのがポイントです。
 もちろん全ての軸に「早く観客の目に入れて、何が問題か明確にする」ことは必要です。そのためにも書き手である脚本家がそれを明確に知っておく必要があります。できればセリフを書き始める前に、それぞれの軸を整理します。登場人物の抱える問題は何か、あるいは何を希望しているのか(軸のスタート)、そしてそれがどんな形で手にはいるのか(軸のゴール)を表にします。看板軸も含めて全てを一覧表にします。このときすでに場面も頭に入っているなら、幕や場も書き込みます。
 さらに、それぞれの軸がそれぞれの幕の始まりでどのようになっているか(スタート)、終わりではどのようになっているか(ゴール)も書き込みます。もう一歩できれば、場ごとにもそれを書き込みます。すなわち、どの軸も物語全体、そして幕や場ごとにおいてもスタートとゴールを明確に設定するのです。これによってどの軸もたるむことなく進行でき、緊張感のある(=観客にとって心地いい)物語になります。

次回は、ようやく「半分に折る」です。